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西アフリカ・マリ共和国のバンバラ族に伝わる伝統的民族布Bogolan(ボゴラン)
西アフリカのマリにはボゴランという泥染めの布があります。
ボゴランは、マリ南西部に住むバンバラ族に伝わる民族布で、正確にはボゴランフィニと呼ばれます。
バンバラ語で、ボゴは「泥」、ランは「~で作られる」、フィニは「布」をあらわし、ボゴランフィニは「泥を使って染め上げた布」という意味です。
バンバラ族は14世紀にマリ帝国を築いた部族で、現在もマリ共和国の最大部族集団でもあります。
いまはイスラム教徒が多いですが、かつてはサバンナの自然をたたえる独自のアニミズム文化がありました。
そのバンバラ族独自の精神性がボゴランにも込められています。
(バンバラ族の人々)
ボゴランの幾何学模様に込められた呪術的な意味
(伝統的なボゴランの柄:出典FOLKLIFE)
ボゴランの柄には、装飾だけでなく身を護るという呪術的な意味もあります。
伝統的なボゴランは、黒字に白く幾何学模様が染め抜かれていますが、
黒い色で悪い霊の魔力を吸い取り、幾何学模様で邪気を迷わせ退散させると信じられていました。
ボゴランは邪気を寄せつけないお守りとして着けられていた布なのです。
ボゴランは男性も女性も身に着ける布です。
出産や割礼など、人生の節目となるような出来事があるとき、それを象徴する柄を儀礼的に身に着けていました。
記号的な柄を見れば、それを身に着けている人がどこの村の人なのか、またそれを描いた職人は誰なのか、などがわかるのです。
バンバラ族に伝わる伝統的な泥染め
(ボゴラン独特の風合いは原始的な織機で生まれる)
独特な風合いを醸しだし、ファンも多い西アフリカの泥染めですが、かなり手間暇のかかる染色手法としても知られています。
布は細長く手織りで織られた幅10~13cmほどの帯状のものを、一針一針丁寧に手縫いで繋げて大きな一枚の布にしていきます。
染め液は、カバノキ属のngalama(ンガラマ)という樹木の葉で作られたものを使用。
それに布を30分ほどひたし、天日干しにします。
この過程で、葉に含まれたタンニンが定着し、白かった布は黄色く変色します。
(ボゴランの染め液を作る女性:出典FOLKLIFE)
続いて、登場するのが「泥染め」の泥。
泥は、川底にたまっている粘土質の泥を壺に入れて1年も発酵させたものを使います。
この泥は鉄分が多く含まれており、この鉄分が染色の過程で重要な働きをします。
(泥染めの泥など:出典MALI・MALI)
布に木の枝などで模様の輪郭を描いていきます。
描き終わったら、模様の線の外側に泥を塗り込んでいきます。
しばらく置いたあとで泥を洗い流すと、泥に含まれた鉄分と布にしみこんだタンニンが天日で反応して布が黒く染まり、模様が浮き上がってくるというわけです。
この行程を何度も繰り返し行うことで、はっきりとコントラストがついてきます。
仕上げに、模様の輪郭線を脱色剤でなぞます。この脱色剤はピーナッツやキビ糠、苛性ソーダを水と混ぜ合わせて作ったものです。
しばらく日に当てたあとで脱色剤を洗い流し、やっと泥染めの完成です。
伝統的なボゴランは黒地に白い模様ですが、
現在では赤茶色やカーキなど、黒以外に染められたものも作られるようになりました。
このように、ボゴランはとても手間がかかっている染め布なんですね。
参考:ボゴラン(泥染め布)の作り方動画
世界的に有名な染め織物Bogolan
(デザイナー「オスカー・デ・ラ・レンタ」のボゴラン・コレクション)
かつてはほとんど知られていなかったボゴランですが、
1970年代から世界的にその知名度をあげていきました。
マリの首都バマコで開催された国際映画祭がボゴランが世界に知られるきっかけになったそうです。
(ミス・マリの女性達もボゴランを着用)
現地の人は、ボゴランを身に着けることはあまりなくなったようですが、
ヨーロッパでは、アフリカの染め織物といえばボゴランと言われるほど人気が高いようです。
身に着けるだけでなく、お部屋のインテリアとしても
(出典:MALACHITE)
ボゴランは分厚く、呪術的な幾何学模様にも力強さを感じます。
実際、アフリカではボゴラン布に大地の生命エネルギーが染みこんでいると考えられています。邪気を払い、体を癒やしてくれる布として身にまとっているのです。
(ボゴラン布はさまざまな商品に使われる:出典Afrolia)
ボゴランは、スカーフなどの身に着けるアイテムとしてもおすすめです。
柄がプリミティブで個性豊かなので、タペストリーのようなお部屋のインテリアとして使っても素敵です。
(日常をテーマにした絵柄も人気)
ぜひボゴランを実際に手にとり、そこに込められた大地のエネルギーを体感してください。
ムトゥンガでもボゴランを扱っています。
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